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(怜一さん、落ち着いて下さい! 相手はお子様なんですから!)
「……申し訳ありません」
怜一の心の雄叫びが聞こえてきそうだったが、表向きはあの善人丸出しな表情である。
「あなた何なの。この人の秘書? ねえ、お姉さん。あなた、社員教育が全然なってないんじゃない?」
怜一がにこりとする。
「残念なが私が正規の幻香師です。こっちは研修中なんですよ」
葵は目を伏せる。もう怜一の顔は見られない。
「ちょっと待って。私、見習いの人担当なの!? 子どもだからって甘く見てるの。客商売でしょう!?」
葵は慌ててなだめる。
「かすみさん、大丈夫ですから。一生懸命やって、ご期待に添えるようにします。もちろん、かすみさんを甘く見てる訳なんて決してありませんし、しっかりやらせて頂きますからっ」
「それがあなたの仕事なんだから当然でしょう」
かすみは胡散臭そうに葵を見つめる。
「……それで桜はどんなイメージですか」
「たくさん花をつけた感じ。もうすっごく、ぶわーって感じ!」
かすみは自分の顔の前で手振りを付けて大きく表現する。
表現の仕方はこれまでのしっかりした感じとは裏腹で、年相応で微笑ましかった。
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