ちーこ

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ちーこ

 ちーこ、ちーこ。と母の呼ぶ声がする。     ちーこはうちに居着いた猫だ。  いつの間にかやってきて、当たり前のように居座った。  毎日のごはんと暖かい寝床のある生活を、あたかも生まれたときからそうしていたように、なんのためらいも、なんの遠慮もなく享受している。    ちーこを見なかったかい、さっきまでそこで昼寝をしていたのだけれど。  朝食を食べ、少しのうたた寝を楽しんだあと、ふらりと外に出て行って、夕食の頃にのそりと戻ってくる。ちーこの日課だ。  心配いらないよ、おなかがすいたら戻ってくるよ。    そうかしらねえ、ああ、おなかが空いた。お昼ごはんはまだかしら。    ついさっき食べたばかりだよ。    そうだったかしら。ねえ、ちーこがいないけれど。    心配いらないよ。  私は同じ話を繰り返した。  母は毎日、朝から晩までちーこを呼んだ。一週間経っても戻ってこなかった。  勝手にやってきて勝手にいなくなる。猫とはそうした生き物だ。    どこかうちより居心地のいい場所を見つけて、ご馳走貰って、きっと元気にしているよ。  納得のいかない母をなだめる日が続いた。  さほど可愛がっているようにも見えなかったのに、母はちーこに執着する。     
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