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十日経ってちーこはひょっこり戻ってきた。
痩せてもおらず、汚れてもおらず、すました顔で、毎日ここにいましたよ、とでもいうような態度で、ちゃぶ台の前の座布団にころりと横になった。
母の機嫌がすこぶるよくなったので、気にしないことにした。
猫に聞いたところで答えるはずもない。
ほどなく、ちーこは散歩をやめた。
ごはんを食べるといつまでもゴロリゴロリと横になっている。食べるばかりで運動をしないせいか、腹がふくらんで、重そうな体を億劫そうにゆさゆさと揺らしながら母の膝に乗った。
ちーこは母の膝の上が大好きだ。
なにが面白いのか、母はちーこの丸くなる姿を見てケタケタと笑い転げた。
それからしばらくして、ちーこは五匹の仔猫を産んだ。
手のひらに乗るくらいの仔猫。
ちーこはせっせと体を舐め、おっぱいをあげ、また体を舐め、おっぱいをあげた。
母と私はちーこが雌猫だったのだと初めて知った。
ちーこはかいがいしく仔猫たちの世話をした。誰に教えられたわけでもなかろうに。
走り回る仔猫を追いかけて首を咥えて寝床に戻す。仔猫はまた寝床から抜け出して、の繰り返し。
そんな様子を母は一日中眺めていた。たしかに見ていて飽きなかった。
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