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気が付いた時は病院の霊安室にいた。私だったはずの身体は無残に引きちぎられ、死に装束が施されていた。
「嘘!? 私……、本当に死んじゃったの?」
両親が悲痛な面持ちで私だった身体を迎えに来ている。
「未亜……、なんで、どうして……」
「……」
母は泣き崩れ、父は無言で涙をこらえている。
「お父さん、お母さん、私はここよ!」
声を出しても反応が無い。無念さばかりがこみ上げてくる。
その後、警官から引き渡された遺体は、私の家に運ばれ、葬儀屋さんが持って来たドライアイスで保護された。
私は自分の部屋に行ってみる。服も小物もそのままなのに、触ることさえ出来ない。虚しさばかりが心にひびく。
「こんな、こんなことって……」
その夜、自宅近くの葬儀場で通夜が行われた。そこには友人たちと職場の同僚、そして……彼氏の青弥(せいや)の姿があった。
僧侶の読経の間、青弥は泣き通しだった。
「どうして……、どうして……」彼の言葉がかすかに聴こえる。私は耳を傾けることしかできなかった。
「こんなことになるなら、仲直りの話をすれば良かった。少しでも時間を作ろうと思っていたのに……」
それを聞いた私は大声で叫んだ。
「青弥! 私はここにいるよ!」
しかし、叫べど叫べど彼には聞こえない。友達や同僚も居たので声をかけたが、同じだった。
通夜が終わり、彼が他の参列者とともに去ろうとした時、私は気づいた。
――あの女子高生が、青弥のことを見ている――
何するつもりなの!? あの女、絶対に許さない。私は後を追った。
青弥は、肩を落としながらとぼとぼと歩いてゆく。
そのあとに女子高生がつけて、私はさらに後ろをつける。
あの私鉄の駅に着いて、ホームに立った。
件の女子高生が後をつけていた。だが彼は全く気づいていない様子だった。
「未亜……」
私の名をつぶやきいた青弥は、とても無念でたまらない表情をしていた。
そこに急行電車が近づいて来る。そこで私ははっとした。彼女が青弥の身体を押そうとしている。
「やめてぇぇぇぇぇ!!」
声は響かない。私はいちかばちか女子高生にとりついた。とりつき方なんてわからないけど。
瞬間、彼女は私に気付いたのか、不敵な笑みを見せた。そして……
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