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エピローグ
――それから
あとから聞いた話だが、青弥も紫亜と二言三言言葉を交わしたそうだ。丁寧に頭を下げられ、私をもっと大切にして欲しいと言われたらしい。
そのあとも、ときおりケンカすることがあったが、ほどなくどちらかが連絡を入れるようになり、長期間連絡を取らないということはなくなっていた。
そんなことがあるたびに、紫亜のことを思い出していた。正体はわからないが、私たちを救ってくれた、笑顔の素敵な自称死神さまを。
2年後、娘を授かった私たちは籍を入れた。
その1年後に生まれた女の子に、今も忘れない、自称死神の名前を付けた。
紫亜はすくすくと育っていった。小学生、中学生と成長していくたびに、忘れもしないあの自称死神とそっくりになっていった。
そして彼女が17歳になったとき、不可能ともいわれた夫の研究がついに完成した。その全貌を聞いて驚いた。
彼は自殺してしまった人を過去に戻って救う。せつない願いを実現させるために、タイムリープ装置と、台本どおりの幻覚を見せる装置を開発した。
最初の実験は私たちが行うということになり、私は紫亜に、あの忘れない事件のことを教えて、それを手帳にメモさせた。
彼女は過去へと旅立ち、そして……
「ただいま。無事終わったわよ」
青弥が作った大がかりな装置から紫亜が出て来た。
「おかえり、紫亜、どうだった?」
「ん? うまくいったよ」
「よかった……、おつかれさま、よくやったわ!」
すっかり疲れた表情を見せる紫亜にねぎらいの言葉をかける。
私たちの娘が、過去の私たちを救ってくれた。それが、今も忘れない自称死神事件の真相だった。
「紫亜、よくやったぞ。お父さん頑張った甲斐があったよ」
青弥も紫亜をねぎらった。それを聞いた紫亜は、
「がんばったんだからお小遣いあげてよね」
と、ちゃっかりと要求してきた。私と青弥は苦笑いしながらうなづきつつ、紫亜に頭を下げたのだった。
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