神を殺す日

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「わたしやあなたの、心の中にいらっしゃるのよ」 「……そうか」  俺は引き金を引いた。一発の銃声が轟き、ひとりの神の器が死んだ。  だが、そうか。そうだったのか。  ずっと疑問だった。  《人類史完全保存システム》を駆使しても分からなかった、神の居場所。  ココにいたのか。俺は自分の胸に手を当ててみる。  俺も、神の器か。  なるほど、どうりで見つからなかったわけだ。神とは数億という人間の中に分割保存されているものだった。ならば最後の神は、俺の中にいる。――殺さなければ。 「これで、俺が王だ」  その日、不老不死の俺は、神を殺すために地球の血潮へ飛び込んだ。灼熱の岩漿が俺を包み込み、無へ還す。  ああ。最初からこうすれば良かったんだな。  俺は生まれて初めての安息を享受した。  これでもう何も聞こえない。  今日は俺の人生で一番、特別な日だ。
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