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実験のために造られたクローンはあらかじめ脳をイジられて、個の人格や高度な思考能力を持たないよう調整される。だから俺たちモルモットは実験のために生まれ、実験のために使われ、実験のために廃棄されるだけの人生に、何の不満も疑問も持たない――はずだった。
だがまあ、最初の人造人間の時代から、科学の世界にはマッドサイエンティストがつきものだ。
俺の製造に携わったリョウ・イシイという男がそうで、コイツは研究所の《定期精神分析システム》を騙し、《電脳警備機構》の目を掻い潜り、複雑に思考するモルモットを生み出した。すなわちクローンの自動製造工程にこっそりと細工して、誰かのコピーであるということ以外、完全に人間と変わらないクローンを造ったわけだ。
でもってイシイはあろうことか秘密裏に、かつ独自開発していたナノマシンを、その特別なクローンに注入した。リョウ・イシイはいきすぎたマッドサイエンティストで、なおかつ100年にひとりの天才だった。
イシイの研究はあの時点で既に完成していて、ヤツは人を不老不死にする方法を知っていたのだ。なのに一切公表はせず、この世にただひとりの不死者を生み出した。そして言った。
「お前は神をも凌駕し、世界の王となれ」
と。
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