神を殺す日

2/6
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 実験のために造られたクローンはあらかじめ脳をイジられて、個の人格や高度な思考能力を持たないよう調整(・・)される。だから俺たちモルモットは実験のために生まれ、実験のために使われ、実験のために廃棄されるだけの人生に、何の不満も疑問も持たない――はずだった。  だがまあ、最初の人造人間(フランケンシュタイン)の時代から、科学の世界にはマッドサイエンティストがつきものだ。  俺の製造に携わったリョウ・イシイという男がそうで、コイツは研究所の《定期精神分析システム(RPAS)》を騙し、《電脳警備機構(CSM)》の目を掻い潜り、複雑に思考するモルモットを生み出した。すなわちクローンの自動製造工程にこっそりと細工して、誰かのコピーであるということ以外、完全に人間と変わらないクローンを造ったわけだ。  でもってイシイはあろうことか秘密裏に、かつ独自開発していたナノマシンを、その特別なクローンに注入した。リョウ・イシイはいきすぎたマッドサイエンティストで、なおかつ100年にひとりの天才だった。  イシイの研究はあの時点で既に完成していて、ヤツは人を不老不死にする方法を知っていたのだ。なのに一切公表はせず、この世にただひとりの不死者を生み出した。そして言った。 「お前は神をも凌駕し、世界の王となれ」  と。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!