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同じように何かあるといつもここに来ていた小僧がおってな」
そう言って遠くを見るように目を細めた。
「それって、うちの学校の生徒ですか?」
「ん?
あぁ、その時は・・・そうだったみたいじゃな」
「その時は・・・・って・・・」
__転校?ってこと?
「あの、うち学校の生徒と結構仲良くしてたりするんですか?」
男性は眉をひょいっとあげ、兎蒼の顔を見ると小さく笑った。
「いやいや。
長くここにおるが、郁学の子らと話すのはお嬢さん、あんたで二人目じゃ」
「一人目の人って・・・」
「う~ん・・・」
男性は大切なものを思い出すように一度空を見上げ目を細めると、何かを思い出したように笑った。
「あれもおかしな小僧であったな・・・
でも、よい漢であったな・・・」
__どうして過去形なんだろう・・・
気になりはしたものの、それ以上その人のことについて聞いてはいけないような気がした。
「さてと・・・」
男性はしずかに目線を兎蒼に向けると、優しく微笑み立ち上がろうとした。
「あのっ」
考えるよりも先に引き留めていたのは、完全に無意識だった。
「お名前教えてもらえませんか?」
「わしか?」
兎蒼はコクリと頷く。
「う~ん、あやつはわしを道さんと・・・そう呼んでおったなぁ」
「道さん・・・
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