プロローグ

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プロローグ

 時は平安。 延暦13年、桓武天皇が平安京に都を移してから幕府が成立するまでの約390年間。 これほどまでに人と妖が密に交じり合い、互いに強い影響を与え合った時代は他に類をみないだろう。 太陽と月、光と闇とが交じり合いそれは怪しくも最も自然で均衡のとれた世界でもあった。 妖たちは強い力を持ち、心の赴くままに人を惑わし、誑かし、その魂を喰らった。 そうして必然と、人間たちの中からも強い力を持つ陰陽師や法師が現れ、妖と人は時に敵として、時に同士として、それらは当たり前にこの世界に存在した。  人里から離れた山の中。 寂れた神社の境内。 ひとりの法師が鋭い双眸を向けた先にいるのは、人の心を惑わすかの如く美しい姿をした妖狐。 銀色の毛並みは見る者の心を瞬時に虜にし、その瞳に見つめられれば男でも女でも、たちまちに夢現となりその魂を差し出した。 「まったく・・・、あんたもしつこいよね・・・」 風になびいた銀髪の隙間から切れ長の双眸が妖艶な光を宿し、法師に向けられる。 「(ぬし)が人の魂を喰らい続ける以上、ほうっておくわけにはいかぬっ」 「ぷっ・・・」 妖狐は噴き出すように笑った。     
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