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そこにはエメラルドグリーンに近い鮮やかな色をしたトカゲがいた。昔、友人の家でイグアナを見たことがあるが、それに近い。だが、決定的な違いがある。そいつは人間のように二足歩行をし、左前足、つまり左手に何やら長細い筒を持ち、右前足、つまり右手を僕に向けて振っていたのだ。
「私を見下ろすんじゃない」
「すいません」
僕は反射的に謝罪するのと同時に、目の前の生き物が喋っているのだと認識した。頭を上げて彼を見る。トカゲであるのに、二足歩行をしている彼の目は、僕のイメージしている爬虫類の冷たく鋭いものではなかった。双眸はどちらも黒真珠でも入れているかのような、黒々としたつぶらな瞳をしている。
「お前、偉大なる精霊って知ってるか?」
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