私の名前はココペリだ

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「神様じゃない。私はカチーナだ。カチーナというのは、『尊敬すべき精霊』という意味であり、神様と人間の間にいて、人間の願いを神様に届けたりしている」 「カチーナは名前?」 「カチーナは役職みたいなものだな。私の名前はココペリだ」  ココペリは胸を張り、自慢げに答えた。ココペリはカチーナの中では偉いのだろうか。僕は、目の前の精霊であるココペリと電車に乗ってのんびり揺られている。何を話せばいいのか皆目見当がつかない。  僕が押し黙っていると、ココペリが「なぁ」とぽつりと言った。 「ときに森野、私がお前の願いごとを聞いてやると言ったら、何と願う?」 「聞いてくれるの?」 「わからんが、お前だったら何と願うのか興味があるだけだ」  窓の外を流れていく景色を見ながら、うーんと唸る。  飛んでいる鳥が見えたけど、あんな風に飛べたらとも思わない。僕は健康だし、欲しいものも、欲しい才能や能力なんかも思いつかない。簡単に願いを叶えることがいいことかどうかとか、そういう倫理的な問題もあるけど、願いごとをしてまでなりたいものや、やりたいことが見当たらない。 「ないなー」  僕の答えに対して、ココペリは目を丸くし、固まった。何か、考えを捻り出した方がよかったのだろうか、と申し訳ない気持ちになる。すると、僕の不安を吹き飛ばすようにココペリが大声で笑い出した。     
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