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「ないのか! お前、ないのかよ」とけらけら愉快そうに僕を見ながら言う。何だか馬鹿にされた気分になり、むっとする。「森野、お前は面白いぞ」と、右手で握っている筒を僕に向けてきた。
僕は顔をしかめながら、「それは何?」と筒を指差した。よく見れば、クリーム色をしたその筒には、いくつか虫にでも喰われたような小さな穴が開いている。
「これは笛だ。祈りをささげる時に使う。私がこれを吹いて、豊作祈願をするのだ」
「へえ。じゃあ、アメリカから持ってきた大切なものってわけだ」と言いながら、彼が日本に来てからどのくらい経つのか気になり、訊ねてみる。
「もう五、六年ってとこだな」
「どうやってきたわけ?」
僕が訊ねると、ココペリは可笑しそうに口をぱくぱくと開け、再び笑い声をあげた。
「お前、アメリカと日本だぞ。飛行機に決まっているじゃないか」
色々なことに対して、理解が追いつかない。
チケットは幾らした? とか訊ねようかと思ったけど、胸の中にしまっておいた。
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