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「今、なんて言ったの?」
「だから、昨日、勇くんに告白されたから……美夢には悪いけど、OKしたよ」
一緒に登校している親友の明美からの突然の告白に、私の頭は真っ白になった。
「え……。だって、私が勇君好きなのは知ってたよね?」
「知ってたけど……美夢が先に言うから、私も好きだっていうチャンスがなかったんだよ」
「酷い!! 私に嘘をついてたんだ」
「嘘って……。私、嘘なんかついてないよ。それに……勇くんは、美夢じゃなくて私を好きだって」
「嘘よ!! 嘘!! 明美、勇君と話したことなかったじゃん。私の方が仲がいいんだから」
田んぼに吹き抜ける風が、電車の音も運んでくる。
誰もいないホーム。
この駅からは、私と明美しか乗らない、無人の寂しい駅。
「仲が良くても、美夢の事は友達止まりなんだよ」
「勇君は、私の事が好きなんだから!!」
それは、衝動だった。
私に背を向けた明美の背中。
たなびく黒く艶やかな髪。
これから、大好きな彼が私ではなく明美を触ると思うと、咄嗟にその背中を押していた。
「美夢!!」
「おやすみ、明美。これで勇君は私のものなんだから……」
薄い笑みを漏らす、私の背後から誰かが走ってくる音がした。
「明美!!」
必死に手を伸ばすが、その手は空を切る。
そして……彼は、落ちた明美を助ける為にホームへと飛び降りた。
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