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駆け落ち日和
「いただきます」
黒瀬は手を合わせた。目の前には楽しげに食事を口に運ぶ子供達の姿や、台所でせわしなく動いている女性の姿が見える。理想の家族を体現したようなその光景に黒瀬は微笑んだ。欲しかった、幸せな代わり映えのしない日常。
「はい、ハンバーグ。焼きたてよ。あなた好きでしょう」
それを求めてやかましく腹が鳴る。にっこりと微笑んで皿を置いた女性に、黒瀬は今でも忘れられない脳に焼きついた記憶を思い返していた。
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