シロツメクサ 後編

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昼飯は、近くのファストフード店で食べた。新しくできたらしい。確か空き地だったはずの場所だ。土曜日の昼だから混んでいたが、一時をまわっていたので席は空いていた。 もそもそとハンバーガーを食べる。 ざわざわとした空間は、会社の近くの店の中と変わらない。 ここにあったって、どこにあったって、変わらないものだ。チェーン店だし。 それから、今からどこに行こうかと考える。さっき、坂の下に行こうと思ったのだが、だったらその前に、家のあった坂の上に行こうと決めた。そこから坂を下りればいい。 店を出て、駐車場に止めた車に乗り込む。今日すでに走った道を逆向きに走り、目的の場所で今度は右折する。 家のあった場所は坂の上。一軒家ばかりが並ぶ高台のようなエリアだった。坂の下を見下ろせる。 流れる景色には真新しい家が多い。森のように木が茂った庭の家がちらほらあったのだが(多分、手入れしていなかっただけだろうが)、そんな家は一つもなかった。なくなっていた。 きれいな空間だった。車とほとんどすれ違わなかった。人とも、だ。静かな空間だった。 しかし、その地形は変わっていなくて、ガードレールのある高台のふちの道に車を止めてみると、下を一望できた。 かつて、何度もやったように下を眺める。 初めてみる景色だった。 マンションが見えた。ここからの景色にそんな建物が映るなんて、初めてだ。 日頃よく見るタワーマンションではなく、小ぢんまりとした背の低いマンション。昔、よく遊びに行った団地はもうなく、そこにも新しいマンションが見える。 かつてぽっかりと空いていて、やたらと目立っていた空き地には何か商業施設のようなものが建っている。遠くには、見慣れた電気屋の看板。 かつて、まるでつぎはぎのようだった景色は、見渡す限り何かしらでうめられていた。 狭くなった。 直感的にそう感じた。 もっと広かったはずだ、と。 ああ、きっと記憶の中のこの景色は、もっと広くて、大きかったのだろう。もっと向こうまで見渡せていたのだろう。 昔見た景色がよみがえってきた。 今とは違う、景色。 ああ、変わったのだ。今更そう思った。
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