ウルトラマリン

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さっそく訓練である。バローズの背中、腰、腕、足首にはパワー抑制のための重力発生装置がつけられてあるので動きは極めて鈍い。かるく体操するだけでも私の意志にリニアでなく操作に困難さがあった。イメージと実際の動きにズレがあり慣れるのに私は一時間近くかかってしまい、神経衰弱すら感じる始末だ。負荷に慣れると、コーチのギャレット〈ディアブロ〉とバローズの模擬格闘戦が始まった。ゴンゴンとどでかい金属音が鳴り響き正直言って私はやかましくて仕方なかった。 二日が過ぎた。宇宙船での生活は快適の一言に尽きる。訓練を除けば。戦闘訓練は想像を越える疲労と消耗を私にもたらしていて、実際に戦っているのはギャレットなのに疲弊するのは私なのだった。慣れが必要だと繰り返し教わるが肉体と精神両方にこたえるのでやめたくなり、しかし戦うバローズの姿を見るにつけやめられなくなる。分身というよりも相棒だった。私は少し勘違いしていた。訓練を始めるにあたって、言わば制御のやり方を覚え、彼を操縦するみたいな感覚で最初はいたのだ。でも気がつく。気がついたのは私は“彼から学んでる”ということ。体の動かし方、重心の移動など細かな点が正確で無駄がなく動きが全体として美しい。普通の人間はあんな風には動けない。戦闘は私のイメージとの連動、そしてギャレットの自律性、それらがバランスすることが重要だった。  
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