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いつ来ても誰かがおり昼間は幅広い年齢層を見ることができる。広場に来ると犬の散歩をしている老人がいて、見渡しても人はそれだけだった。
が、ふと気づくと背後にもう一人いた。スーツ姿の三十代とおぼしき男。男は私を訝しい表情で見ている。失礼な奴だ。
「おかしいなあ」と男は言った。関わりたくないので自転車に戻ろうとする私を彼は呼び止めた。
「待った待った、こんにちは熊本魔凛さん」
は?なぜ名前を知ってるの?
「ちょっと訊きたいことがあるのですが、あなた格闘技の経験はありますか?」
適当にあしらおうと思ったが何となくそれはまずい気がした。危険な匂いがする。
「一年くらい空手をやってた時期があります、昔です」
「にしても高すぎるんですよ」
「何がです」
男はストップウオッチのようなものを首から下げていて、それを手に取って画面を私に見せた。
「こちらの単位にしてあります」
画面には〈750823〉と表示されてあった。約75万…だから何?
「向こうのご老人は2です。ここのプロ格闘家の上位でも1000を越えたくらいですよ」
「はあ」
「これ戦闘力の数値です」
私は笑いそうになった。しかし次の瞬間にはマジな気分になった。何かの冗談か、でなければ私はからかわれている。
「壊れてるんじゃないですかね?」
男は自分にその機械の上部を向け何やら操作し、その数値を私に見せた。〈214327〉だった。約21万。
「大体いつもこの辺の数値です」「…で、あなたは何?」
「説明して伝わるなら最初からそうしてるんですよね」
急に周囲が暗くなっていき周りが夕方の風景に変わった。いつの間にか遠くに小さく山が見えるだけの荒野に私はいる。知らない風景だ。これは?…何?
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