ウルトラマリン

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宇宙船に移動し幾分落ち着くとネヴィルから万能翻訳剤と説明された錠剤を渡され、私はそれを素直に飲み込んだ。船にはネヴィルの他にも二九名の乗組員がいるしこの先ずっと関わる相手は異星人である。一粒で三日くらいは効果を維持できるという。船内の案内と説明が一通り済むとすぐに私にはギャレット使いとしての専門コーチがついた。ジェイムズという筋骨隆々のおじさんで先ほど元軍人だと紹介を受けた。訓練室の中央で彼自身の銀色のギャレットも付き添うようにしてそばに立っている。黒い巨人を横に私は言った。「はい質問」「ん?」「なんで私のギャレットは武器を持ってないの?」「知らん」「不利ですよね」 ジェイムズのギャレットは背中に剣を背負っているのだ。見たところ私のパートナーは無手である。 「で、この黒騎士みたいな彼の名前は?」 「それはあんたが決めることだよ」 「そうなんだ。会ったばっかりだしなあ。黒はあなたの星の言語で何て」「ディアマ」「候補ない?」ジェイムズが宙空で何か操作し、その宙空に現れたスクリーンにカタカナの羅列が並んでいる。説明によれば黒関連の宇宙言語をカタカナ表記にしたものらしい。私は本人に尋ねてみた。「どれがいい?」私の黒騎士が右手の指で〈マリ〉を指したのでそれは女のコの名前ねと教える。彼は続いて〈バローズ〉を指した。 「いいじゃない。どこの言語?」 「プロキシマ・ケンタウリの単語で黒い玉という意味だね」 「じゃあ決まり。あなたは今からバローズ」彼はうなづいた。 「話せないのかな」 「ケースバイケースだ。あんた次第とも言える」  
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