第1章 母の存在

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
暫く、ベランダで、母と星空を見ていた。 会話が消えてから、間が空いた時、母は口を開いた。 その時のことを私は、何故か、今でも覚えている。 「お母さん…」 思わず、そう口から出た。 自分の部屋で立ったまま、机の上に置いてある、ある物を目にして、手に取った。 手元には、母が私に残した交換日記。 そして、御守りだった。 その御守りを胸で抱え、ぎゅっと握った。 その後に、交換日記を振り返るように、次から次へと捲り続け、目の前の景色がぼんやりとしていた。 「ねえ、結衣」 「うん?」 首を傾げながら母を見る。 その時の母の表情が今でも浮かぶ。     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!