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本当のパジャマ
あるところに、パジャマを愛して止まない男がいた。
彼は変態でもなんでもない、ただパジャマに対しての思い入れが人一倍強いだけの、平凡なサラリーマン。
どんなに嫌なことがあっても、帰宅してパジャマを着てしまえば全て忘れられるほど、パジャマが好きなのだ。
その生地の心地よさや、だらけたような感触を、意識を保ったままなるべく長く感じていたいがために、彼はパジャマを着てから最低でも2時間は眠りにつかない。
頬擦りして、洗い立ての匂いを嗅いで、ボタンの感触を堪能して、満足するまでは眠れないのだという。
彼にとってのパジャマは鑑賞するものであり堪能するものであり、興奮の対象なのである。
毎日毎日夜遅くまで、彼はパジャマとの時間を楽しんでいた。
そんな風に夜更かしをしていた彼は昼間、仕事場ではいつも目をこすってあくびをして舟を漕いでいる。
羊の数を数えるように数字の羅列された表、おとぎ話よりもつまらない何かの経緯報告書、子守歌のような部長の説教…。ああ、キーボードが低反発の枕に見えてきた…。
スーツを着ている昼間、彼は今すぐベッドに入れたらどんなに幸せだろう、と毎日思っていた。あ、ランチの冷奴がベッドに見える…。
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