高鳴る魔女

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   えりな氏の、いくらか明るくなった目元を信じることにする。  更衣室から出ながら、初めて知った。自分の中に、人を信じることのできる部分がちゃんとあることを。  今までだって当然、人への信頼はできていると思っていた。  けれどそれは、仕事や立場上に発生する責任を押し付けていただけだったと気づく。  えりな氏とのやりとりは、どう考えても会社の同僚であることの責任という名目でできるものじゃない。  友達同士でも、女同士だからでもない。  わたしとえりな氏の間だからこそできたやりとりだったと思う。  自分の中に他人が混じっていくこの感覚に、違和感や気持ちの悪さはこれっぽっちもなかった。 .
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