高鳴る魔女

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   遠慮なく放たれたその呼びかたに、一瞬ムッとしてしまう。 「なんでしょう、カモンさん」 『お前な。シバくぞ』  智久さんは、会社では変わらずわたしのことを“スズメ”と呼ぶ。  厳しく禁止されているわけでもないけれど、社内恋愛なんてそうそうばらすものじゃない。だから彼がわたしの呼びかたを変えないことは普通のこと──なのだけれど。 『誰がカモンや。お前ひとりくらいそれに乗っかるの、やめてくれや』  お前ひとりくらい、という言いかたは少しだけ気に入った。  けれどそれを声には出さないことにする。 「呼びかたが気に入らないのはお互いさまでしょう」 『しゃーなしやで。スズメ、けっこう気に入ってるしな』 .
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