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「私が居なくなった後、この子の面倒を見る人が居ないと思って連れて来ちゃったけど、よく考えたらSNSで里親募集、とか呼びかけておけば良かったんだ。ごめんね……」
とモグを抱き上げた。キュイキュイと鼻を鳴らし、美言の右頬をなめた。
「くすぐったいよ……。モグ、このまま自由にしたら、どこか幸せに暮らせるかな……。大丈夫だよね。元気でね」
とキャリーバッグに戻さず、大地に直接おろした。途端に、擦り寄ってくるモグ。
「さて、そろそろ逝くね。ちょうどあそこに、紐をかけるのにとても良さげな木があるし、木登りして、その枝に紐をかけて。ぶら下がれば簡単だよね。その前に……と」
そう言って、バッグの中から小さな白い錠剤の入った小瓶と、水の入ったミニペットボトルを取り出す。その小さなショルダーバッグに、よく詰め込んだな、と思えるほどに上手く入っていた。その小瓶は市販の好ヒスタミン薬だ。それを木の上で全て一気飲みして、強烈な眠気が襲って来た時に首を吊ろうという魂胆であった。
「モグたん、結局、放置プレイしちゃったね。無責任で駄目な飼い主でごめんね。でも、もう生きるの、疲れちゃった。もう、頑張れないや……」
そう言うと、全てを振り払うようにして立ち上がる。そして目の前の低木を目指した。何という樹かは不明だが、紐をくくってぶら下がるのに最適の高さだ。木登りもしやすそうだ。
キューイキューイキューイ
大きな声で鳴きながら、モグがあとを追った。そして足にまとわりついた。
「初めて出会った時も、こうして足元にまとわりついたねぇ」
涙声で見下ろす。そしてモグを抱きあげ、目的地に進んだ。
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