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モグは必死に飼い主を思い留まらせようと鳴き叫ぶも、美言は意識を失う。首に縄がかかるかかる寸前、
「チッ」
モグは確かに舌打ちをすると、全身から黄金色の光を放った。その光は矢のように瞬時に縄に届き、切る。美言は落下した。
ドサッ
美言はうつ伏せに地面に落ちたのか、胸や腹に僅かな衝撃が走った。もう死の寸前なのか衝撃は柔らかな弾力に感じた。モフモフフサフサの毛並みの感触が懐かしい。
……あれ? 意識がハッキリした?……
美言は漸く様子が異なる事に気づく。
「……気づいたか?」
ビオラを思わせるような、深みのある声が頭上から響いた。
「え? な、何?」
美言は驚いて体を起こした。
「え? あの……?」
何か馬程の大きさ、丈の獣(?)の背に、腹ばいになって乗っていたのだ。
「馬鹿な事をしおって」
「え……」
声の主は、その獣(?)だった。それはライオンのように黄金色に輝く、見事なたてがみを持ち、金色がかった体は薄茶色で、ふわふわモフモフのたっぷりした長い毛並みに覆われている。四つ足はさながらカモシカのようだ。振り返った顔は、ちょうど犬のアフガンハウンドを思わせる。優雅で高貴な顔立ちだ。顔の部分は明るい茶色の毛並で覆われている。黒々とした漆黒の鼻先は艶やかで、丸みを帯びた小さな三角形だ。大きな瞳はアーモンド型で、こっくりとした漆黒である。まるで黒水晶のように澄んでいた。
「あの、ここは……」
美言は戸惑いながらも、その獣の背をおりる。やはり、見たことも無い生き物だ。しかも人語を操るなんて、ファンタジーの世界に迷い込んだようだ。
「あれ?」
汚れたり、切り傷だらけだった手足は、跡形もなく綺麗になっており、破れて泥まみれだった筈のワンピースも網タイツも、新品のように綺麗になっている。
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