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1 神降千早の事件簿 その壱
動く汽車の中。突然頭から血を流して倒れている人の死体。立ち尽くしその光景を呆然と見ている桜色の袴姿の少女。
大騒ぎになる前に、千早は警部の肩書を有効利用させていただいた。
一等客室を締めだし、千早と警部のみが残る。
最初こそ警部は千早に、「女性はこのような悲惨な現場にいるべきではない」と主張した。
なるほど、悲惨だ。残酷だ。むごたらしい。
人が殺されたのだ。
彼の意見はこの時代の男性はあるべき姿「女性を守る」という常識に誠にかなった主張だった。 変わり者の警部もそこは常識人であった。
けれど、相手は千早である。
「私は女だと言った覚えはないけどね…まぁ、男と言った覚えもないけれど」
というもの主張を通して、にっこりと笑う。
千早はきちんと自分の使い方を分かっている。鳳凰院静流はそうすると、必ず折れてくれるのだ。
そうやって警部と2人この現場に残った。
「さてさて、いくつもの疑問がここで湧き上がるところなのですが……」
状況を一通り確認した警部が首を傾げる。
「疑問かい?たとえばなんだろう?」
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