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「なぜこのタイミングなのか?この二人きりの婚前旅行という素敵すぎるタイミングで!いつも いつも僕と千早さんの仲を邪魔するように、……なぜ事件は起こるのだ?」
「さぁ、なぜだろうね」
千早はあまり興味がないという風に答える。そもそも婚前旅行ではない。婚約もしていない。彼が勝手についてきただけだ。
「で、他には?」
全然期待せずに聞いたのだが、
「なぜ、事件は僕と千早さんの愛の巣で起きたのか!」
やっぱり期待外れだった。千早は先が進まないと、他のことに気を使うことにした。
「大丈夫かい?」
警部に背を向けて、事件のあった部屋の前の廊下に、今は力なくしゃがみ込む袴姿の少女に声をかける。
赤いリボンが愛らしいが、彼女からはどこにでもいる普通の少女という印象を受ける。
「あ、あたし……」
「無理はしないで」
千早がほほ笑むと青白い少女の顔がわずかに赤くなる。
「君はどうしてあそこにいたんだい?」
彼女が持っている切符は三等車のもの。三等車のものは、当然華族やお金持ちが利用する一等車や二等車は通ることも許されない。
「……友達を探してたんです」
「友達……」
「そうしていたら、友だちが血を流して倒れているのを見て……」
彼女は身震いをする。
「あたし、気絶をしていしまったみたいで……」
「うーん!この状況!わかっりましたよ!千早さん!」
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