1 神降千早の事件簿 その壱

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申し訳なさそうに少女が口をはさむ。 「何かあるとすぐ気を失っちゃう体質で……」 「なるほど。世の中広い。そういうこともあるかもしれないな。ね、警部殿」 「千早さんがおっしゃるのなら!」 根っから一つのことしか見えていない男をかどわかすことなど、千早にとって簡単だった。 「あぁ、そう言えば名前を聞いていなかったね。君の名は?」 「えっと……葉月桜子です」 「桜子さん。きれいな名前だ」 ニコリと笑うと彼女の脈は急上昇した。 「私は神降(かんぶる)千早だ」 「千早……さん?」 「よろしく……」 白く陶磁器のような手を差し出す。少女は戸惑いながらも握手を交わした。千早の手のあまりの冷たさに少しぞっとしながら……。 「そして彼は鳳凰院静流(しずる)警部殿」 「鳳凰院?」 「有名な華族、鳳凰院家の御曹司さ」 「ちなみに千早さんは僕のフィアンセだ!」 「え、フィアンセって……」 「勝手に設定を付け加えないでおくれ……」 ため息とともに千早は苦言を呈する。 少女はきょとんとした顔をした後、慌てて取り繕うように、 「あっと……、ごめんなさい。てっきり殿方かと思ってしまって」 確かに千早は男の子にも見える。かといって女の子に見えないわけでもない。     
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