193人が本棚に入れています
本棚に追加
「警部殿。現状の把握を頼む」
「もちろんです!」
千早に主導権を握られても、彼には警部としてのプライドはないらしい。千早に頼られるのが素直にうれしいらしい。
「僕たちが食堂車で食事を楽しんでいる時に女性が駆け込んできました!」
「それで、私はすぐに現場へ駆けつけた訳だが、警部殿はその助けを求めて食堂車に駆け込んできたご婦人の介抱に当たったわけだろう?」
「えぇ、彼女はひどく動揺していましてね!」
「私の記憶が確かならば、彼女は一等車の隣の客ではなかったかい?」
「千早さんの言うとおり!彼女はちょうど食堂車から見て奥にある部屋の客だった」
「事情は聴けたのかい?」
すると警部は頭を振った。
「残念ながら今も錯乱している状態ですよ。ただ聴けたのは隣の部屋で人が血を流して倒れているといったことだけでした……」
「なるほど……。ここで君に聞きたい」
千早はそう言って、おびえる桜子に視線を向ける。
「あたし……ですか?」
その向けられた視線が以外にも穏やかであったためか、桜子は素直に答える。
「何でしょう?」
「君はその御夫人より先にこの遺体を見つけたのかな?それとも後かな?」
「わかりません……」
最初のコメントを投稿しよう!