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少女はしょぼんと肩を落とした。
「あたしはさっき言ったとおり動揺すると気を失う体質みたいで……。女の人がいたか、いなかったかなんて……」
「では質問を替えよう。」
人差し指をくるりとまわしながら、千早は尋ねる。
「君は三等車の人間だろう。何で一等車にいる?」
「友達を探していて……」
「さっきもそう話していたね」
「女学校の友達なんです。私、仙台の実家に帰ろうと思って……。そしたら遊びに来てくれるっていうから一緒に汽車に乗って……」
「それから?」
「そしたら一等車が見たいって突然言い出して、彼女言い出したら聞かないものだから……。
途中停車したの大宮の駅でこっそり忍び込んだんです」
「なるほど、あそこで倒れているのは友達だったわけか」
それならばいっそう衝撃も強かろう。彼女が立ったまま気絶してしまうのもわからないでもなかった。
「それでなかなか戻ってこない友人を探してここまで来たのか」
「そしたら倒れているから……うっ」
「つらいことを思い出させてごめんよ」
優しい声で桜子に呼びかける。
「それじゃぁ、君は休んでいて。私がその犯人を見つけてあげるから」
ポンポンと肩を叩く。すると彼女は少しだけほっと安どの息をついた。
「さてと」
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