1 神降千早の事件簿 その壱

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警部はそのたくましい妄想力を最大限に発揮する。 「この死体は外にいる桜子さんと一緒に我々の部屋に忍び寄った。そして私たちが姿を消した後に宝石を物色した。だが、取り分を巡った彼女たちは喧嘩をして、勢い余って友人を殺してしまった……ということでしょうか」 「なかなかのストーリーだが……やはりそれでは彼女が犯人ということになって、なぜ逃げなかったのか?宝石を一つも持っていなかったのか?凶器はどこか?つじつまの合わないことがたくさん出てくる」 「そうですか……」 せっかくかっこよく決めたつもりがぴしゃりといわれてしまう。 「結論を急がないことだよ。警部殿」 「千早さん!」 「だから私はこう考える。この人をよく見ると後頭部から一撃を受けて、出血多量で死んでいる。前のめりに倒れていることをみると、おそらく後頭部を殴られたショックで倒れ、そのまま出血多量で亡くなったのだろう」 そして、千早は揺れる車内に戸惑うことなく、優美なしぐさで、近づき、ひざまずく。そして、亡くなった彼女の長い髪の一房を手に取り、まるで王子のようにキスをした。 「かわいそうに……これは殺人だ」 「殺人!」  警部はそのことの大きさにいつも以上に声を張り上げる。     
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