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2 神降千早の旅行記
高崎駅で降りた警部とその御一行は、用意された車で当然のごとくと不運の列車を後にした。
「うわぁ」
帝都でも珍しい車というものに乗ったことが桜子にとっては大きな感激であったらしい。彼女は車を見渡し、窓の外からの羨望の視線を受けながら驚嘆の声を上げた。
「初めてかい?」
「はい?」
千早たちと出会って初めて彼女は屈託なく笑う。
「それでは、貴重な体験ができてよかったね……」
「……もしかしてお二人は自家用車をお持ちですか?」
一等車に乗っていた客室ならば……と桜子は尋ねる。
「もちろんだとも!」
いち早く警部が答える。
「彼は六男とはいえ、天下の鳳凰院家の人間だからね。彼専用の車があるくらいなんだよ」
「そんなにお金持ちなんですか?」
「おや、君は鳳凰院家を知らないのかね」
日本一と自他ともに認める、華族にして大財閥、鳳凰院。彼らの恩恵を受けぬ商品もサービスも日本どころか、世界にもないのではないかと思われる規模の財閥だ。
それを知らぬものがよもや日本にいようとは……。警部にとっては大げさに転んでしまうほどのショッキングな事実だった。
「警部殿」
ちっちっと指を振って千早は反論する。
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