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そんな御宅にいきなり普通の女学生が尋ねて行っていいものなのか?やっぱり桜子は不安になってしまった。
だがしかし。
彼らについてこないということは警察にご厄介になるということ。それは……あってはならないこと。家族に対してもそうだけれど、通っている女学校も今までどおりに通わせてくれるかどうか怪しい。
一生、汚名を浴びて生活していくなんて、その方が桜子には耐えられなかった。
なんとしても彼女は自分が無実であることを、何も知らないことを説明しなければならない。
「あのっ!」
考えが及んだ末に言葉だけが先に出ていた。
「私っ……」
「なんだい」
千早が微笑みながら首を傾げる。
その笑顔を見たら次が出てこない。
「えっと……」
「おや、そろそろ正面玄関につくようですよ、千早さん!」
確かに壁が一部途切れているのが見えた。そこに洋服姿の女性も立っているようだ。
初老の運転手は次第に車のスピードを落としていく。やがて車は止まり、運転手がいち早く下りて、うやうやしく客を降ろすために後部座席のドアノブに手をかける。
「ありがとう」
当然のように降りていく警部に慣れぬ、桜子は戸惑った。
「話の続きは後にしよう。まずは車を降りようじゃないか」
「え……はい」
でもどうやって降りていいかわからない。
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