序 ???の遺言状

5/8
193人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
 普通の人ならこの人物に対して戸惑いを覚えるだろう。しかし、この青年は違う。  名門華族、鳳凰院家の六男坊。鳳凰院静流(しずる)ならば。 「そう言って僕をまたかどわかすんですね!」  ひと際大きな声で彼は告げる。 「こんなにかわいい子が女の子でないはずがない!」  凛々しさとかわいらしさを併せ持つ相手を相手そういってのける。 「声高らかに言おう!千早さんは可愛い!」 「ありがとう」  そっけなく礼を言ってから千早と呼ばれた人物は、 「それはともかく、あまり大声を出しては他の人に迷惑だよ」 「お、千早さん!今日はバラのコロンですか?優雅でよろしいですな!」  人の話を聞いてない。  それも千早にとっては慣れたもので、 「良く気付いたね」 「千早さんのセンスの良さは抜群ですな!」 「そうかい?」 「もっとも千早さんならば薔薇でもチューリップでもバターでも!どんな香りでもお似合いでしょう!」 「それは褒められたととるべきなのかな?」  普通は4驚くようなことでも千早は眉一つ動かさない。あくまでも優雅にふるまう。 「それにその真珠の首飾り!」 「あぁ、これかい?せっかくの旅行だからね。君からのプレゼントを一つ身に着けてみることにしたよ。」     
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!