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蒼い月夜に魔物が目覚め、コバルト大陸の政は乱れた。
魔物の名前はビーストといって、一億年前に勇者が封印したとされる知性を持った生物であった。
ビーストは影を操り、人間を惑わして生き血を啜る。その姿は口伝と想像画でしか伝わっていなかった。巨大な羽根、太い四肢を持ち、牙を携えている。肌は岩肌で剣などまるで効かなかった。幻影と言う部下を踏んだんに使って人間を拐うのである。
そのビーストがマリナとアクアが住んでいた村を滅ぼした。悲劇は途方もない角度から二人を襲ったのである。
マリナとアクアはビーストに受けた仕打ちが同じだと知って意気投合した。
二人はビーストを再び封印するために、一億年前、勇者とその仲間が使ったと言う伝説の拳銃の部品を探している最中であった。
しかし噂と言うものは恐ろしい速度で広がった。
コバルト大陸の南山脈を住み処としているビーストにまで伝わってしまったのである。
マリナはビーストの縄張りまで足を踏み入れて様子を探っていたところ、幻影に見つかって戦闘を強いられていたのであった。
南へと向かう四駆車はアクアの愛車だ。コバルト大陸の大切な移動手段で免許を取得しなければ扱うことができない。
四駆車の屋根でマリナは肩にかついだランチャーを下ろす。
幻影はどうやら蹴り散らしたようだ。ビーストはある一定の縄張りからは出てこない。ビーストの放つ幻影は夜は攻撃力が小さい。幻影が厄介なのは昼間だ。影の癖に光でその力を倍増させて遠距離での仕事をこなす。
「幻影を潰すにも伝説の拳銃を早く見付けて修復しないとね」
ランチャーを助手席の窓から投げ入れて、マリナ自身も滑り込む。
「ランチャーは後部座席に置いてよね」
「はいはい。でも、三発しか撃てないとのはちょっと問題じゃない?」
「文句言わない。これでもリトニアに急がせたんだから」
アクアがアクセルを踏むと四駆車は加速した。
マリナはランチャーを後部座席に押しやって足を組んだ。右腕に痛みを感じて僅かに顔をしかめる。
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