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淡い光が呪文も詠唱もなしに傷口を塞いでいく。
「はい、終わり。お風呂いってらっしゃい」
リトニアは手をひらひらと振ってマリナを送り出して立ち上がった。
「本当。腕だけで良かったわよ」
黙っていたアクアがマリナが居なくなると言葉を発した。
「魔力訓練、嫌うからな。マリナちゃんは」
「元々、魔力の素質は薄いから無理はさせたくないんだけれど。ねえ、何か発明で補えないの?」
アクアが空いたソファに腰掛ける。ミニスカートから太股が覗いた。綺麗な茶色い眼差しがリトニアに向く。
「マリナちゃんが嫌がるんだよ。やっぱり、子供の頃のことを気にしているんだろうね」
「ビーストに村を襲われたときのことを?」
「マリナちゃんの村は西側に存在したんだ。ビースト事件でも二番目に大きな被害を出したと言われている。ただその村が問題なんだ」
「マリナ、そのことは話してくれないものね。青年に貰ったナイフのことは話してくれるけど」
「コノエ村では実験が行われていたんだよ。魔力と科学の融合と言う実験が。マリナちゃんの両親も研究者だったんだけど。ビーストの部下である幻影が襲ってきたとき彼らの武器はなんの役にも立たなかった。マリナちゃんは助かったけれども右足負傷、左目の視力は低下。魔力強化装置は破壊された。そこからよく頑張って成長したと思うよ」
「だったら強化訓練すればいいのに。と言うより何でそんなに詳しいのよ」
「魔力が薄いから頼りたくないんだってさ。情報網を駆使したんだよ。二番目に大きな事件だよ?」
「勝手に調べてまた怒られるよ。それにしてもマリナも頑固ねえ。魔力に武術どちらも使えればいいのに。あの魔力強化ナイフだけじゃ限界が来る」
「ああ、それと衣服もね!」
リトニアが嬉々とした表情でそんなことを口走る。
「衣服って、リトニアが作るの?」
「そうだよ。可憐にドレスアップした二人もいい。地味に黒いワンピースばかりのマリナちゃんには深紅のドレスを用意しようかともうんだ」
「却下」
「ええ、なんでさ?」
「どう考えても戦闘には宜しくない」
「他にも着ぐるみとか、メイドさんとかあるんだけどな」
「駄目。絶対却下」
「だけど、私服じゃ危ないよ。相当、身体を鍛えないと!」
「五月蝿い。黙れ」
リトニアは半分膨れっ面で台所に引っ込んでいった。
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