1章 眠る月《スリーピームーン》

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マリナは十八才になったばかりだ。アクアは二十代半ばだ。あれから八年たってコバルト大陸の情報取得方法も随分と変わった。まず、都心部にはマザーとなる情報箱(コンピュータ)が設置されている。 そこから個人が持っている小型情報箱(スマホ)中型情報箱(パソコン)に情報を受けとることができる。情報箱には補佐情報箱(パット)がそれぞれ設けられており、一度に複数の人間が情報を共有できる仕組(システム)にもなっていた。その便利さが相当な障害(トラブル)を呼んでいるがそれは別の話だった。 マリナは小型情報箱を使う。アクアののように中型情報箱を持ち運ぶことが面倒なのである。小型情報箱でも掲示板は覗ける。ただ、性能が違うので覗ける情報量(キャパシテイ)は大幅に違う。 コバルト大陸の情報箱は数万年前から急激な進化を遂げている。最初は情報を発信するだけの物が今では通信機の役割を担っていた。また情報交換の場としても使われるようになった。この場合、やり取りは活字である。 主格(リーダ)となる人物が集団(コミュニティ)に情報掲示板を作り、情報を求める。その掲示板に情報提供者(ユーザ)が情報を書き込む。書き込まれた情報は(ロック)を外して覗くことが可能であり、情報提供者のみに掲示板に書かれた情報拡散が許されている。そのため、個人的なやり取りは通話が多い。通話もほとんど打ち合わせ場所の確認で済ませる。情報を盗み出す輩があとを絶たないことが原因だった。情報監理局は防御操作(セキュリテイ)強化に勤めているがなかなか進歩しなかった。 (あった。拳銃の情報だ) マリナは画面に釘付けになる。 嘘か本当かは出向かなければわからない。 (オーケイ。今度は北国トランジスト) 中型情報箱の情報を小型情報箱に移し変えるとマリナは寝台に転がった。 瞳を閉じて見えてくるのは十年前のコノエ村が襲撃された事件であった。
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