Beginning time

8/8
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/586ページ
 うず高く積み上げてあった資料の途中から、抜き出したため、バランスを崩していた紙の山が収集つかないほど、雪崩を起こしていた。あまりにも、放置されている案件が多すぎるため、手付かずで、どんどん上へ上へ載せられていく様。それを対処できず、国立はほったらかしで、毎日一度は、雪崩タイムが発生。  帽子のつばを少し引っ張って、かがもうとした時、崇剛の写真と、さっきの多額の保険金の案件が一番上に乗っかっていた。 (神様のお導きって、やつか。  人生、何があんのかわかねぇな、全く。  だから、生きてんのはインタレスティングなんだよ)  回転椅子にどさっと腰掛けて、床に散らばった資料の上に足を乗せ、左右に大きく股を開いて、さっき、タダで受け取った缶ジュースを一口飲み、 「オレは、ガキか……」 (果汁30%のオレンジジュースって……。  葉っぱとのシンクロ率、低すぎだろ)  手に入れたばかりの霊感を使って、持っていた案件を、ブルーグレーの鋭い眼光で射殺しながら、 (変なフィーリングすんな、これ……。  ただの、保険金、目当てじゃねぇ。  ここは、墓場っつうことで、オレは墓守。  らよ、それらしく、仕事してやるぜ。  どうしたら、これ、立件できんだ?)  こうして、霊能力初心者の国立は、聖霊師と大きく関わる事件へと、聖霊寮の他の職員とは違って、やる気を持って挑み始めた。霊感を磨くということがあるとは知らず、国立ーー心霊刑事は持ち前の勘の鋭さで、事件をどんどん明るみへと引っ張り出していったが、彼の霊感は、感じる程度で見ることも話すこともできず、流れてゆく、1年以上の歳月。  それでも、解決できない事件は多々あり、その度に各地にいる聖霊師の助けを借りて、仕事をこなしてゆく過程で、崇剛がどれほど優れているか、嫌でも気づかされ、自分が予感した通り、一目置く人物となった。
/586ページ

最初のコメントを投稿しよう!