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第二章 裏切り
ちょうど俺が、おばあちゃんの作ってくれた優しい味のする卵焼きに舌鼓を打っていた、その時だった。
「おはようございます。朝10時のニュースです。昨晩未明、名古屋市瑞穂区で起きた殺人事件ですが、愛知県警は凶器に付着していた指紋や目撃情報などから、犯人を防犯カメラに映っていた男と断定。殺人容疑で指名手配しました。容疑者は名古屋市の大学生、澤村一弘21歳。……」
「指名手配されたか。思ったより厄介になってきたな。」
本多は煎餅をかじりながら、テレビ画面を見つめている。
違う。大切なのはそこじゃない。
凶器から、俺の指紋が出た?
じゃあ犯人は、俺しかいないじゃないか。
でもそんなはずはない。俺は昨晩バイト終わり真っ直ぐ家に帰って……それからすぐに寝て……。
鈍い頭痛を覚えた。そんな、バカな。
俺は、殺してない。
でもだとしたら、指紋は、なぜ。
「まさか、そんなことをする奴だとは思いませんでした。」
テレビから聞こえるのは、聞き覚えのある広嶋の声だ。
「でも、ちょっと根暗なところはありましたね。反省して、しっかりと罪を償ってほしいです。」
「一昨日も会ったんですけど、怪しい素ぶりは特にありませんでしたよ。まさか彼が、と思いましたね。」
真鍋の声だ。
「ただ、カッとなりやすい奴だったので、頭に血が上った時は怖かったです。被害者の男性は知りませんが、きっと何かトラブルがあったんじゃないかな。友人の一人として、自首してきてほしいなと思います。」
俺は……殺してない。
「あいつら…ふざけんじゃねぇ!」
本多がテレビ画面に向かって憤っている。
めまいがした。足元が崩れていくような錯覚を感じる。俺が、この手で、人を?
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