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けど、あと数年もすれば、この歪みが当たり前になるのだろう。
おかしいと声をあげる人が、たとえ、いたとしても。
僕に関して言えば、この悪夢みたいな状況を悲観してはいない。
むしろ、大歓迎。
男である僕は源ちゃんのお嫁さんにはなれない。
なれたとしてお友達。
そう、数年前までは。
だけど、今は結婚以外に主従契約がある。
「僕は源ちゃんの玉になる」
そして、すべてを上書きしてもらう。
すべてを……。
脳裏を過ぎった映像に吐き気が込み上げてくる。
自分の姿など見ることはできないのに、おぞましい現象だ。
苦笑してどうにかやり込めるとスズメに微笑みかけた。
「ここへはもう帰ってこない。だから、バイバイ。元気で」
花梨さんが用意してくれたバックを肩にかけ、重い鉄格子を押す。
幼いとき、手が痛むほど叩いてもびくともしなかったそれはとても簡単に動いた。
やっと、会える。
やっと。
外で待っていた軍服の男にアイマスクをつけるよう命令される。
僕は男から受け取った真っ黒いそれを目に当てた。
源ちゃん、僕は生き抜いたよ。
源ちゃんに会うために。
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