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日置女史が非能力者に力を貸し、能力者へは差別をするべからずとの見返りが公約されたが、なんのその。人々の心は簡単には翻らず、息を潜めるように過ごしていた僕と母の存在を誰かがリークし、聞きつけた一般市民の手で、父は非能力者を匿っていたという理由から撲殺され、母は父を守ろうとして斬り殺された。
九歳のときだ。
まさに、地獄へ突き落とされたようだった。
当時、力をコントロールできず、光を纏っていた僕は目隠しをされ、レンガで覆われたあの空間に幽閉された。苦痛は途切れなく、重なっていくものだとそこで教え込まされた。
僕だけじゃない。玉と呼ばれる羽目になった能力者達は首輪のされない奴隷みたいなものだ。大人達だけの間に浸透した考え方だと思っていたけど、子どもの間でも根強いんだな。
僕は神代高校の宿舎の受付で案内された号室のドアの前で目を細めた。
豪華な玉使いのとは違う古ぼけた寮に不満があるわけじゃない。
背後の部屋から筒抜けになってくる女の悲鳴と男達の下品な声。
ここは最高峰の高校じゃないのかよ。
玉使いは玉と契約を結ぶまでは、玉に直接触れなければその力を使うことはできない。けど、接触が濃密であればあるほど効果は継続する。快楽じゃなく力を得たかったのだと言い訳すれば、強姦も見過ごされるってことか?
階下には号室を言い渡してくれた受付の男がいるが、なんの反応もしない。
黙認というわけか。
そういう校風じゃ仕方ない。
ノブを回し、宛がわれた部屋へと入ろうとした。
が。
どこかで誰かが僕に叫んだ。
声にならない叫び。
思念に近い。
言葉で表せば、
彼女を助けろ!
不可解な状況。
だけど、僕の体はその声に応えるように背後のドアに手をかざした。
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