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女が泣き出す。
とたん、風が木製のドアを木っ端微塵にし、床に押し倒されるピンク色の髪に水色の瞳をした女と、驚愕する男三人が露わになった。
「てめぇ、玉使いなしに力を使うのは犯罪だぞ」
一人が頬を引きつらせる。
僕は私服のそいつに笑いかけてやる。
「今はそんなことになってんの? つくづく、理不尽な世の中だな」
女がはだけた服を寄せ合わせ、胸元を隠した。
「警察に突き出してやる!」
別の男がこちらへと走ってくる。
眉間に力を込め、相手を宙に浮かす。
そいつはジタバタと水がないのに泳ごうとした。
「調子にのんなよ、この化け物が!」
感情が冷めていく。
第一声をあげた男が、机にあった電気スタンドを持ち、振りかぶりながら突進してくる。
腹部にあるであろう力の源を意識し、至近距離に迫った男の動きを拘束する。
すごい、と女が呟く。
僕は彼女ににっこり微笑み、赤面のお返しをもらった。
おろせとか、殺すとか、騒ぎ立てる男二人を目にし、眼鏡をかけた最後の一人が女に口づけたのはそのときだ。
眼鏡は女を突き放し、勝ち誇ったように笑った。
「これで対等だ。泣かす」
数本の氷の円錐が眼鏡の前に現れる。尖った部分はこっち向きだ。
お友達を傷つけるかもってリスクは考えないんだな。
眼鏡が手を突き出す。
だが、なにも起きない。
正確には、動こうとする氷に逆の力がくわわり、停滞している状態だ。
眼鏡が震えながら床に膝をつく。
「どうしようかな、これ。せっかく出してくれたのに、このまま壊すのは勿体ないよね?」
とんがりを三人それぞれに向ける。
「僕は化け物なんだから人を排他してもいいんだよね? だって、同じじゃないって、君らが先に喧嘩を売ってきたんだから」
半眼で玉使いを見下してやる。
「僕らは道具じゃない。人だ」
力を緩める。宙に浮いていた男が落下し、電気スタンドを持っていた男はバランスを崩しかけるが、転倒をなんとか免れた。
女が息を飲む。
「逃げてください!」
加害者達が被害者を振り返る。
「もう遅いよ」
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