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 氷の切っ先が三人の男めがけて発射される。  女が自分の身なりも顧みず、凶器に手をかざした。  小さな熱球が何個も飛び出し、氷を溶かす。 「なんで……?」  眼鏡が女を窺った。  女は僕に苦い表情をしてみせた。  僕は溜息をついて後頭部を掻いた。 「逃げるんなら今だと思うけど? その子が気絶したら君ら終わりだよ」  眼鏡が先頭を切って仲間を連れ、去って行く。  そいつは最後に女を一瞥した。  僕は散らばった木片に手をかざし、パズルをはめるようにドアを再構築する。  開閉を二、三度ためし、良好であることを確認してからドアを閉めた。  宛がわれた部屋に入り、さっそく荷物整理を始めた。  部屋を一通り把握したところで、ドアがノックされた。 「はい」  ドアを開けるとさきほどの女が神妙な面持ちで立っていた。  服は着替えられている。 「さきほどはありがとうございます」 「ありがとうって感じじゃないけど?」  半眼で首を傾げると女はムッと頬を膨らませた。 「助けていただいたことは感謝しています。ですが、あのような対応はいかがなものかと思います」 「はあ、そうですか。では、今後は放置いたしますね。どうかそれで気持ちを治めていただけません?」  女の勝ち気な眼差しが揺らぐ。 「私はただ! ……力はああいう使い方をするためのものじゃないと」 「もしかして余計なことした?」 「え?」  腕を組んで戸惑う女と対峙する。 「あんた、力をコントロールできるのに襲われたとき、使わなかった。本当は犯されたかったんじゃないの?」 「違います! 私は規則を守っただけです!」  女の瞳が潤む。 「怖かった! 男のあなたにはわからないかもしれませんが」  わかるよ。 「怖かったに決まっているでしょ!」 「だったら、まず、自分を守ってやれば?」  女から力みがとれる。 「そんだけ。じゃ」  ドアを閉め、ベッドに腰掛けた。  触れた額は冷たく、死んでるんじゃないかと誤信しそうになる。  寒くもないのに体が震え、親指の関節を噛んだ。  源ちゃん、会いたい。  早く。  早く会いたい。
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