5人が本棚に入れています
本棚に追加
氷の切っ先が三人の男めがけて発射される。
女が自分の身なりも顧みず、凶器に手をかざした。
小さな熱球が何個も飛び出し、氷を溶かす。
「なんで……?」
眼鏡が女を窺った。
女は僕に苦い表情をしてみせた。
僕は溜息をついて後頭部を掻いた。
「逃げるんなら今だと思うけど? その子が気絶したら君ら終わりだよ」
眼鏡が先頭を切って仲間を連れ、去って行く。
そいつは最後に女を一瞥した。
僕は散らばった木片に手をかざし、パズルをはめるようにドアを再構築する。
開閉を二、三度ためし、良好であることを確認してからドアを閉めた。
宛がわれた部屋に入り、さっそく荷物整理を始めた。
部屋を一通り把握したところで、ドアがノックされた。
「はい」
ドアを開けるとさきほどの女が神妙な面持ちで立っていた。
服は着替えられている。
「さきほどはありがとうございます」
「ありがとうって感じじゃないけど?」
半眼で首を傾げると女はムッと頬を膨らませた。
「助けていただいたことは感謝しています。ですが、あのような対応はいかがなものかと思います」
「はあ、そうですか。では、今後は放置いたしますね。どうかそれで気持ちを治めていただけません?」
女の勝ち気な眼差しが揺らぐ。
「私はただ! ……力はああいう使い方をするためのものじゃないと」
「もしかして余計なことした?」
「え?」
腕を組んで戸惑う女と対峙する。
「あんた、力をコントロールできるのに襲われたとき、使わなかった。本当は犯されたかったんじゃないの?」
「違います! 私は規則を守っただけです!」
女の瞳が潤む。
「怖かった! 男のあなたにはわからないかもしれませんが」
わかるよ。
「怖かったに決まっているでしょ!」
「だったら、まず、自分を守ってやれば?」
女から力みがとれる。
「そんだけ。じゃ」
ドアを閉め、ベッドに腰掛けた。
触れた額は冷たく、死んでるんじゃないかと誤信しそうになる。
寒くもないのに体が震え、親指の関節を噛んだ。
源ちゃん、会いたい。
早く。
早く会いたい。
最初のコメントを投稿しよう!