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クスクスと漏れる笑い声にリサは混乱し、周囲を見回す。必死に状況を把握しようとするが、目に映るのは、呑気な顔をした3名のみ。
「リサ、負傷者。結構重傷だろ」
見かねたマルコが、くつくつと声を漏らしながらクリストファーを指す。
それで漸く、リサは状況を飲み込んだ。
太陽の位置を確認し、慌ててリサは準備をする。
食事を半ば無理矢理に押し込むと、すぐに前日の治癒の続きへ取り掛かった。
「皆はゆっくり食べてて」
と他の3人に声をかけ、自身は掌を患者の身体へ当てる。
クリストファーは複雑な表情を見せたが、マルコに手伝われ、右手でできるだけ控え目に食事をとった。
それでも、堅パンをかじる音や振動が彼女の術の妨げになりはしないかと、時折左肩へ手を当てる癒術師へ目をやらずにはいられない。
3人が食事を終え出発の準備を整えた頃――クリストファーの準備だけはまだだが――、リサは瞼を上げ、長い息を吐いた。
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