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「それじゃあたしは、完全に日が落ちる前に荷物を取ってくるね」
タシャが動じた様子もなく、立ち上がる。
リサも落ち着いた様子で頷き、行ってらっしゃいと声をかけている。
マルコとクリストファーは、信じられないという顔をした。
「タシャ」
マルコが慌てて荷物を掴んで、歩き出す背を追う。
「一人じゃ危ないっしょ。オレも行く」
ありがとうとタシャが答え、2人の背中が木々に隠れた。
「ごめんね」
リサが抱えた膝に顔を預けて呟く。
何が、とクリストファーは問う。
「身体を、治しきれなくて」
自嘲が、彼女の伏せた瞳に浮かんだ。
「偉そうに言っておいて、情けないわ」
溢し、リサはハッと顔を上げる。
「あ、あの……」
彼は弱音を吐いたりしてもいい相手ではないと、思い出したのだ。
「忘れて、今の」
彼のこと、全くオーフが一端の口をきいておいて、とでも言われそうだと、彼女は慌てた。
「……いや」
しかしリサの予想に反し、彼は静かな声を返す。
「君が癒術師で助かったよ」
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