はちみつ色

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はちみつ色

はちみつ色の髪の毛が、日の光を浴びてきらきらと輝いていた。くるくるとカールした柔らかそうな髪は、頭の後ろで一つに束ねられており、大きな赤いリボンで飾られている。相変わらず派手だな、と口の中で呟きながら、太一はその横を通り過ぎた。 夏の日差しは容赦なく地面を照りつけていた。じわじわと汗の浮かぶ額をタオルで拭うと、木陰に位置するベンチへと腰掛ける。スケッチブックと鉛筆を取り出し、パラパラと紙をめくっていく。もう半分以上埋まっているスケッチブックは、全て同じ被写体を描いており、もしも誰かにこれを見られたならば、間違いなく警察に通報されるだろうと太一にも分かっていた。だからこそ、誰も背後を通ることのないこの木陰のベンチが太一の定位置で、いつも同じ時間にここへ来てはスケッチブックを開くのだった。     
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