第1章

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 困っている私の膝の上に突然一匹の茶色の猫がのってきて私に囁いた。 「思っている事を何でも言えばいいのよ。誰もあなたの意見を否定する人もいないし笑う人もいないから大丈夫!自信を持って!」  この猫は私の心の中が見えるのか。私は、人前で意見を言うのが非常に苦手だ。  でもここは猫の世界だ。人間の世界とは違う。ようやく私は重い口を開いた。 「皆が下を向いてスマホに夢中になっているあの光景異常だと思います。子供達が挨拶しないなんてよくないですね・・・えっと、あの挨拶は本当に大切だと思います・・・」まずい、言葉が続かない。いつもならここで誰かにばかにされる場面だ。 「素晴らしい!あの光景はやはり異常だね。挨拶はどこの世界でも大切!その通り。いい事言うねぇ」黒猫長老のやさしい言葉に私は救われた。 「さて、今日の集会は、これでおしまい!今から、恒例の宴会に移るとしよう。素敵なお客さんもいることだしな」司会の白い猫が言った。ぞろぞろと猫達が移動を始めた。 「会場をご案内します。私について来て下さい」私は白い猫のあとに続いた。  見慣れた地下鉄の構内に見慣れない扉が急に目の前に現れた。     
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