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「いい?女としてのたしなみ、色気も大事だけど。少しはスリルある女、小悪魔になりなさい」
「だからなんの話をしてるの?」
「じゃなきゃ、貴方。いつまでも安全圏の女で終わりね」
だめだ。全然話が見えない。
「清水さん、いったいシノは何の話をしてるんですか?」
「んー。簡単にいえば、少し隙があって、色気がある方が相手を惑わせる、って感じでしょうか」
余計にわからんわ。
「なんで美容室とかの話からそんな話に飛んだわけ?」
「……あなたはなんでもアンテナはりすぎなのよ。そんなんじゃちっとも生きてても楽しくないわよ。いつか息が詰まるときがくる」
「……」
「少しは守りたいと思えるくらい弱音はいたって罰はあたらないわ。頼れる、安心できる相手に困ったときは委ねなさい」
それが私からのアドバイスだとシノは言う。
話は見えないが、つまり息抜きをしろってことでいいんだろうか……。
小悪魔がそれになんの関係があるのかわかんないけど。
「いるでしょ?安心できる相手」
「んー」
まぁ、なんとなくだけどそういう相手だなと思うのは身内以外でいるのはいるけど。
委ねる?
なんだか適当にあしらわれそうだし。
むしろ頼りないしな。
「戦力外だな」
「……」
思いっきりため息をはかれた。
「1年たっても本質は変わらないわね。髪も伸びて、少し大人びた風貌によりいっそうなったけど」
「そう?」
「ま、それが貴方らしいんだけど。変なとこ鈍いから」
「?」
「夏ごろに一度私も日本に久しぶりに行こうかしら」
「明弘も喜ぶよ」
仕事をはやく切り上げるわ、と意気込むシノ。
「とにかく、日本でも頑張りなさい。あなたならきっとなんとか乗り越えられるわ」
「ありがとうシノ」
「日本にいったら、また私のつくった夏服着て頂戴ね」
「はいはい」
謎の会話をしているうちに、搭乗時間になる。
「そろそろ行かないと」
「雅様、お元気で」
「なにかあったらすぐ連絡しなさいよ」
「ありがとう。またね」
カバンをもって、立ち上がり搭乗ゲートまで歩いていく。
2人に見送られながら、私は日本へと再び旅立つ。
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