prologue.

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* 「あ、もしもし明弘?私だけど」 『やぁ、雅。おはよう。ってそっちは夜か』 寝室のベッドに座り電話をかけるのは、私の親代わりであり大切な人、野上明弘(のがみあきひろ)。 優しい声音が受話器越しでも伝わってくる。 『そっちはどう?』 「今日、ようやく研修期間を終えて修了式だった」 『そう。おめでとう。雅なら楽勝だったんじゃない?』 「まさかチマチマした事務処理とか、テーブルマナー、お茶の出し方とかまるで秘書みたいなこともさせられた」 『まぁ、補佐官向けのやつって、田島君言ってたしね』 ほんと、なぜ私がこんな講座を受けてるんだろうと何度思ったかは数えきれないほど。 私は裏社会の秩序を管理し、タブーを犯したものは裁くジャッジメント、いわば裏社会の掃除屋の人間だ。 その協力機関として警察の秘密部署がつくられ、特別極秘捜査課(とくべつごくひそうさか)通称秘密部がビジネスパートナーとしてあるわけだが その統括主任いわゆるボスである田島龍一郎(たじまりゅういちろう)にほんの1年と数か月前に推薦するからいけと別件での任務仕事のついでに送り込まれた。 田島はなぜか私を自分の直属の部下として傍におきたいらしい。 変わった上司だ。 『日本の人もいたんじゃないの?』 「いたけど、結構幅広い国の人いた」 『へぇ、雅の使える言語増えたんじゃない?』 クスクス笑いながらそう尋ねてくる明弘に、自慢気に告げる。 「ちょっと教えてもらって、中国語とフランス語覚えた」 『さすが雅だね』 勉強は嫌いじゃない。 秘書実務をひたすら覚えるのに飽きていたから、その合間に色々教えてもらった。 『シノは元気?』 「元気だよ。相変わらず、着せ替え人形みたいに毎日試着させられるし、たまに自分のブランドで作ってる服を着せられて出かけてこいと追い出される」 『シノは雅のこと大好きだからねぇ。でも、雅もう日本に戻るから悲しんでるんじゃない?』 「さっきまで延々酒に付き合わされた。私飲まないのに」 『今は?』 「早々につぶして清水さんに押し付けたから、今は一人」 明弘があははと笑う声が聞こえる。 『……あぁ、おもしろい。雅はいつこっちに?』 「明日の夜の便で出るから、時差あるし日本には明々後日の朝につく」 『そう。じゃあ、迎えにいくね。行くときは見送れなかったから』
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