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目的地に到着すると、清水さんがふり返りメモを差し出す。 「先ほど、来校のアポイントはとっておきました。この名前の職員につないでもらってください。私たちはあのカフェでお待ちしております」 そう清水さんは、向かい側にある駐車場のあるチェーン店のカフェを指さす。 「はい。ありがとうございます」 車を降りて、テディベアをもっていく。 学校に入り、事務室らしきところを探し、中にいる人に話しかける。 【すみません。さっき電話したものですが、この方につないでいただきたいです】 事務員はこちらに気付いて近づいてきて、メモを見る。 【職員室は突き当り右ですよ。お通りください】 【ありがとうございます】 お礼を伝え、言われた通りに職員室に行く。 職員室の前に、すでに一人女性がたっていた。 こちらに気付くと走ってきて、声をかけられる。 【望月さん?】 【え、あぁ。はい】 【やっぱり。私はここの教師をしてる、エマよ】 ニコリと微笑まれ、ペコリと頭を下げる。 【今の時間はちょうど少人数のクラスで勉強中ね。ついてきて】 彼女は先に歩き、ついていく形で私が後ろを歩く。 【ここは日本の留学生も多いから安心して勉強ができるわよ。それに、あの子は今まで学校に十分に通えてなかったと聞いてるから1日一部の時間は彼女とワンツーマンで遅れた部分を取り戻してるの】 【そうですか】 【あのこは努力家だし、もともと勘がいいのか頭がいいわ。きっと伸びるわ】 えらく大絶賛してくれる言葉に、返事をしつつ教室に向かう。 【ここよ】 【ありがとうございます。10分ほどで退散するので】 【あぁいいのよ。好きなだけ会ってちょうだい】 適当だな。 教室を案内し終えると、終わったら事務所に声をかけて出てくれと言い残し自分は別の仕事だと去っていった。 教室を開けて覗くと、一人の教師と対面して小さな体が座っていた。 【……?あら?】 あ、やば。 教師がこちらに気付き、子どもも振り向く。 とっさにテディベアで顔を隠す。 【くまさん?先生、見に行ってもいい?】 【えぇ。いいわよ】 トコトコと近づいてくる気配がする。 【くまさん、迷子?】 英語を上手にしゃべり、こちらに話しかけてくる子ども。 【どこからきたの?】 「日本から来たんだ。君と一緒」 「……にほん?」 「君に会いに来たよ」
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