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空港につき、手続きを済ませ空港内で時間をつぶす。
「あら、貴方さっきまでそんなリボン髪につけてたっけ?」
「さっき貰ったの」
シノはふーんと言いながら私の髪を持つ。
「随分伸びたわね。切らないの?」
「切りたいんだけど、今はいいかな。日本で明弘に切ってもらう」
ポニーテールにはしているが、アメリカに来てからは髪は切ってない。
1、2度日本に一時帰国もしているが、その時は軽く梳くくらいの時間しかなかった。
随分と伸びたな。
「行きつけの美容院に行くかと思ったら、明弘?あんた、相変わらず飲食店だけでなく美容室も信用してないの?」
「落ち着かないのよ。あの空気が」
赤の他人に、ずっと長時間背後に立たれ髪を触られるのを想像しただけでもぞっとするのに、おまけに持ってるものがハサミだし。
べらべらしゃべりかけられるのも嫌だ。
「相変わらずねぇ。外でおしゃれなホテルでディナーに誘われたらどうするのよ」
「シノは絶対そっちで考えるんだね」
「当たり前でしょ!女なのよ!エスコートされるのは夢だわ」
シノは女じゃないでしょ。見た目はどの女性もうらやむ美貌だけど。
「別にエスコートされたいなんて思ってなかったし」
「じゃあ真夜中ドライブは?!海の見える場所まで車で走って、甘い夜を過ごすのなんて夢でしょ?」
「ドライブ行きたいなら、この1年間の間に免許取ったんだから自分でいくけど」
「そういうことじゃなぁぁぁい」
忙しいな、シノは。
「シノは、雅様に仕事だけでなくプライベートも充実させてほしいという意味で仰ってるんですよ」
「十分充実してるんですけど」
「それは仕事で!でしょうが。もっと女性として、若いうちに遊んでおかなきゃ!」
「あそぶ?」
なにで遊ぶの。
「合コンいくとか、飲みに行くとか、女子と集ってトークするとか」
「シノのほうが若いね」
「そんなことを言ってる場合じゃないわ。駆け引きよ、何事も」
「なんのはなし?」
「あなた隙がないから男っ気ないのよ。そんなんだからいつまでも隠されて終わりなの」
「……はい?」
一体何の話をしてるんだシノは。
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